システムはどんどん複雑化し、人材はどんどん減ってゆく

業務は日々増えるのに、人材が不足すれば何が起こるか?今いる人に業務が集中し、疲弊していくことが目に見えています。疲弊している先輩方を見た若い人たちは、果たして「システムエンジニアになりたい」と思うでしょうか?誰が見てもかっこいいと思えるスマートな働き方を実現する手段になりたいと思っています。

また、Exastroは、単に負の連鎖から脱却することだけでなく、事業拡大に向けた新たな取り組みを行うことにも一役買いたいと思っています。

開発のきっかけ

違和感(スマートな働き方を支えるシステムエンジニアの働き方はスマートじゃなかった??)

初めてシステム開発/構築プロジェクトに携わることになったとき、デジタル化を支えるシステムエンジニアの働き方に大きな期待をもっていましたが、就いてまもなく、システムエンジニアの業務自体はアナログで属人的なことがわかりました。それでも日々の業務は問題なく回っていましたので、当時はそういうもの、としてスキルを磨きました。

限界を超えた決定的なできごと

日本全体がガラケーからスマートフォンへ一気に転換した2010~2015年。人口数千万人のネットサーフィンの需要増に対応すべく毎日休みなく機器増設を繰り返していたため属人的に管理されていたシステム構成は不明確となり、設定ミスが多発。これを防止するためにさらにレビュー工程を増やし、煩雑化。負の連鎖と呼ぶべき状況に陥り、ここから脱するためには長年見て見ぬふりをしてきたアナログの工程を見直す時が来ました。

最初の一歩

負の連鎖から脱するために、ヒューマンエラーが多発していた「システム構成情報の管理」に着目。情報を一元管理する仕組みを作り、グループに展開。これを機に作業工程の見直しが進み、業務の「デジタル化・自動化・効率化」が実現し始めました。

本格化

前出の怒涛のような機器増設が一段落した2015年ころ、同じような課題は通信キャリアに限らないのでは?という疑問から横断的に分析してみると、予想通り同じような状況が見られました。社外に目を向けたところでやはり同じような課題が散見されたため、システム業界全体の課題ではないかと考え始めます。

そうであれば、世界中でDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速していく中、企業が遅れを取らず、余裕をもって事業を拡大していくために、解決しなければいけない課題である。という結論に達し、汎用的に使える仕組みを作るべく活動を開始し、Exastroの開発へと繋がりました。

OSS(オープンソースソフトウェア)で公開することへのこだわり

お気づきの方も多いと思いますが、Exastroは企業の中で開発されたアプリケーションです。それなのに何故利用制限をかけないのか?とよく聞かれます。最近は企業イメージ向上のためにOSSを選択するケースも増えていますが、Exastroはそれを狙ったものではないので企業ロゴも掲げていません。

ではなぜOSSなのか?

システムエンジニアは、DXを支える重要な役割を担っています。例えば、わかりやすい例で言うと、通信(電話/インターネット)や銀行のシステムは多くの人が利用していて、もはや「あると便利」なものではなく「なくては困るもの/正常に動くことが当たり前」のものとなっています。

しかし、これらはただ維持されているのではなく、日々進化していく技術やニーズに対応して、新機能追加や機能強化を繰り返しています。このバージョンアップは常にリスクがあり、ヒューマンエラーで止まって、ニュースになっているのを見かけた方も多いはず。これらのサービスを利用するたくさんの人たちがシステムが止まったことによって機会損失をしていれば、被害は目に見える部分だけではなく、はかり知れません。

同じように、皆様の企業で当たり前に稼働しているシステムが止まってしまったらいかがでしょうか?重大な機会損失を招く恐れはありませんか?それなのに、ミスが起きやすい状況にあったら、放置して良いでしょうか?

今後ますますDXは加速していきます。同時にIT人材の不足も加速していきます。そうなったときに、人の手で支えられてきたシステムは世界の中で生き残れるでしょうか?

これに未曽有の大規模かつ長期にわたる設備増設の連続を経験することでいち早く気づくことができた身として、生き残りこそが急務だと信じます。会社もこれに賛同し、一企業として自社のお客様だけに目を向けるのでなく、広く使っていただくことに意味があるとし、OSSで公開しています。

痛い目にあった人たちが自分たちの経験をもとに必要に迫られて作った、非常に現場視点のアプリケーションです。「まだ大丈夫」と思っている方々も、いつ我々と同じ状況になっても不思議ではありません。ぜひ一度試していただきたいと思います。

安定した(間違いがない)ルーティーンを変える勇気

「実績があり、今現在はそれほど困っていないルーティーンを何故変える必要があるのか?」

自動化すれば今より楽になるかもしれない。ヒューマンエラーも減って良くなるかもしれない。とはいえ、本当にそうなるのかは未知数です。大切な会社のシステムを預かる以上、今のやり方でできるなら変えたくないというのが普通の心理だと思います。

でもそれだと、今のやり方で破綻する/手遅れになるまでは変えないということになります。

実際、私がやっていたプロジェクトは従来通りでできなくなったから自動化への一歩を踏み出したわけです。もちろん、リスクがないわけではありません。でも、まだ代替案として従来のやり方が通用するうちに確立しておかなければ結果的にお客様に多大な迷惑をかけてしまうかもしれません。ルーティーンを変える勇気というのがいかほどのものか痛いほどわかりますが、それで破綻して苦労した経験者でもあります。

ぜひ私と同じ苦労をしないためにも、勇気をもっていただきたいと思います。

最後にExastroに興味を持っていただいた方々へひとこと

Exastroはシステムライフサイクル(設計/開発/構築/運用)に関わる業務をデジタル化・自動化・効率化する際にお役立ちするツールです。

それと同時に、私たちエンジニアの価値を高めるツールだと信じています。長年のルーティーンを見直し、働き方を改革して、みんなでかっこいいエンジニアを実現していきましょう。

吉田 功一
日本電気株式会社 プラットフォームSIサービス&EA統括部 ディレクター
吉田 功一
2006年入社。京都大学大学院エネルギー科学研究科卒業。
NEC入社後、主に大規模通信キャリアのシステムアーキテクチャー設計、開発プロセス設計、運用プロセス設計に従事。
システムエンジニアとして多忙な日々を過ごす傍ら、システムというデジタルなものを作り出すはずの業務が「アナログ・手動・非効率」であることを課題と捉え、2015年頃より「システム開発・構築・運用」の「デジタル化・自動化・効率化」への取り組みを始動。2019年にExastro Suiteの最初のソフトウェアであるIT AutomationをOSS(オープンソースソフトウェア)として公開。2022年より現職。